気がつけば身の回りが散らかってしまう自分。
少しでも片付けようと机の引出しを整理していたら、ゼンマイ式(手巻き)の腕時計がヒョッコリと顔を出しました。
自分が子供の頃に親父のお古に貰ったもので、今は電波式時計などでもお馴染みのシチズン製の時計です。
懐かしさに駆られゼンマイを巻いてみると、「チッチッチッ・・・」と心地よい音が聞こえてきました。
電池式などでは奏でられることのないこの音と「チチチチ・・・」と進む秒針に、日常の喧噪を忘れさせてくれる癒しを感じます。
時計の素性
この腕時計、どんなモノ(製造年や、価格など)なのかとネットを探っても、残念ながら同様の製品は見つかりませんでした。
ただ、おそらく年式は1970~80年代始め位で、特別お高級な代物ではないのかと。
そう思ったのも、特段作り(特にメタルバンド)がお高級な感じがしないのと、何より入手経路が親父からというのが大きい。
まぁ折角だし使ってみようと思ったのですが、風防の使用感(多数のキズ)とメタルバンドの“ヤレ”がどうにも気になり、このまま使うのも少々気が乗りません。
この2点をどうにかして、気分も新たに時を刻んで貰いましょう。
風防の修繕
写真のとおり、斜めから見ると風防に無数のキズが有るのが分かります。
あと、お伝えし忘れましたがプラスチック製の風防です。
コレを磨きで修繕します。
バンドを外す
先ずは専用工具を使ってバンドを外します。
ケース(時計の本体)とバンドを繋いでいる芯は、トイレットペーパーを支える芯棒(と言えば分かり易いでしょうか、)のように伸び縮みします。
工具の先端がY字になっている方でコレを引っかけて外します。
ちなみに外したケース、結構汚れています。
このタイミングでしっかりと掃除しておきます。
ちなみに裏はこんな感じ。
時計にお詳しかったら、どんなモデルなのか教えて頂けると嬉しいです。
風防磨き
バンドを外して作業がしやすくなったところで磨きに入ります。
紙ヤスリで削っていきます。
最初は #400 で削り始めたのですが、結構キズが深かったようで #320 から始めました。
そこから適当に番数の間隔を空け、紙ヤスリは #2000 でお終いです。
次はコンパウンドで仕上げます。( #2,000、3,000、8,000、15,000 の順)
コレで順に磨いていきます。
こちらだ。
正直なところ、自分が思い描いていたようにキズが取り切れなかったのが悔やまれます。
ただ、ここまでやってチョット疑問点が生まれました。
もしかしたらこれはキズではなくて、ヒビなのかと・・・。
仮にそうならいくら研ぎ出しても風防をいたずらに削るダケ。
少々不本意ですが、この辺で止めておきます。
バンドの交換
元々付いていたメタルバンド。
風防と同じく細かい無数のキズが目立つのも一つですが、こんな風に弧を描いてしまうのが一層ヤレを感じさせます。
以前、時計に詳しいヒトに聞いたのですが、これはバンドのコマとコマの連結部の芯が痩せてしまった為に生じる現象だそうです。
※新品の状態でも多少の「あそび」はあります。
勿論このままでも使えますが、冒頭で申したとおり気になるので交換します。
バンド選び
オリジナルの雰囲気を踏襲し、新たなメタルバンドにするのも良い。
雰囲気を変えて革のバンドにするのも面白そう。
・・・迷った結果コレにしました。
色々と迷った結果、モレラート製のボーレという革バンドにしました。
理由は、この腕時計の他にも数本持っているのですが、茶色の革バンドのモノが無かったから。それと茶色の革靴に合うものが欲しかったので、こちらの Gold Brown を購入。
自分の想像どおりの品で一安心。
バンド選びの注意点
形状や色、素材を好みのモノにするのも勿論大事ですが、ソレと同じ位(以上)に大事なのがサイズ選び。
お恥ずかしながら自分でバンド交換をするのが今回が初めてなので、「1mm位違っていても(小さくても)大丈夫かな?」と思っていました。
ただ、一抹の不安が有ったので時計屋さんに教えてもらったところ「サイズはピッタリのモノが良い! むしろそうじゃないと変!」と力説頂きました。
バンド交換初心者の自分にはとても有益な情報です。実店舗サイコー。
なので測ったケースそのままの幅のモノを使います。
ちなみに19mmという幅、体感ですが現在ではあまり流通していなさそうです。近いところだと18mmとかは結構有ったんですケドね。
なので自分は取り寄せてもらいました。
こういったところで「古い時計」を実感します。
交換手順
バンドを外すことが出来たなら、取り付けるのも難しくはありません。外したときの逆の手順を行えば良いダケ。
ただ、今回新たに取付けるのは革製のバンド。サイズが合っていても取り付けるのが少々キツかったです。
多少押し込むコトも必要になるかもしれませんが、折角のオニューのバンドにキズを付けないように注意してください。
で、こうなりました。
渋さが増しました。ちょっと増し過ぎた感も否めませんが、概ね理想どおりです。
終わってからの感想
仕事でスーツを着る際に、茶の革靴・茶の革ベルト・茶の革鞄・この腕時計の4点セットでキメようと思っていたのですが、仕上げてから気付いた衝撃(笑撃)の事実があります。
そもそも最近はスーツを着る機会が減ってきたという事実に。
こいつぁ、うっかりだ。
次にスーツを着るのはいつだろうか…。
それじゃ私服を着る際に着けてみようか?
いやいや、自分はこの時計に合う服装はまずしない。
参った参った。
でも、失敗したとか後悔した感じは全く無い。
自分の経験値が増えましたし。
それと何より忘れ去られていた時計に再び日の目を見せるコトが出来た。それだけでも十分満足感が得られます。
貧乏性な自分だからこその感情かもしれませんが、昨今の日本は少々消費社会が行き過ぎているのかなと思っています。服にしても家電にしても、果ては車に至るまで。
大袈裟かもしれませんが、世界を見渡せばモノが足りない生活をしている方々も五万(ゴマン)といらっしゃるワケで。
今の日本での生活、物資に困ることが少なく大変ありがたい限りなのですが、その反面でモノを大切にするという日本人に備わっていた感覚が薄れてくるのも感じます。
まぁ、資本主義社会の日本では経済を回す意味も込めて、ある程度は消費社会にならざるを得ないのカモしれませんが。
そんな思いに耽りながら、しばらくは機械式時計ならではの秒針の進み方を眺めていたいと思いました。
ちなみに今回のこの時計、古いゼンマイ式にも拘わらず、日差±5秒未満。
凄いぞシチズン。
オーバーホールもしていない古時計でこのレベルは驚愕。
最近の電波時計やソーラー式の時計も勿論良いけれど、もっと機械式もアピールされてはいかがですか?
そもそも腕時計をするヒトが頭打ち(むしろ減っていると聞いたコトがある)な状況で機械式がラインナップされてるダケで凄いのカモしれません。応援してます。
いや、ホントに。
でわでわ